今回は、DXの現状とPower Platformのメリットや製造業・建設業・小売業・サービス業における活用例をご紹介します。
DXへの取組の現状
2018 年 9 月に経済産業省が「DXレポート」においてDXへの取組の重要性に言及し、DXが進まなければ「2025 年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。近年DXの認知度は高まっているものの、2022年のDXレポート2.2においても、既存ビジネスの効率化中心にデジタル投資がなされている状況であり、DX推進指標自己診断結果分析レポート(2022 年版)*1によると、全社戦略に基づいて部門横断的 DXを推進できるレベルに達していない企業が 9 割程度、全社戦略が明確ではなく散発的な実施にとどまっているレベルの企業が8割程度あることが明らかになりました。
Power Platformのメリット
前述のDXレポート2.2において、「DXにおける競争優位性は、個人単位の強みに頼るのではなく、組織レベルで集積されてこそ発揮されるものである。その際には、組織や業務を横断してどれだけ広範囲にデータが共有され、活用できているかが重要である」と述べられているように、DXに欠かせないのが、データの利活用です。
現場のDX推進ツールとして近年多くの企業で採用されているPower Platformには以下のような効用があり、データの利活用を強力に促進します。
1. 環境・業務の変化に対して迅速かつ柔軟に対応可能なローコードツール
既存のユーザー情報や認証基盤を活用して素早く開発・改修ができる強⼒なツールです。
2. OutlookやTeamsなど、Microsoft 365との親和性が高い業務アプリが作成できる
普段の業務で慣れ親しんだMicrosoft 365とシームレスに連携するアプリが作成可能です。
3. Microsoft 365のライセンスを保有していれば、原則追加のランニングコストが不要
既存のインフラを活用できるため、新たな環境の準備や追加のランニングコストに対する投資が原則不要です。
業界別Power Platform 活用例
製造業
品質管理の自動化
Power Automateを使用して、製品のパラメーターや検査結果を自動的に収集し、品質データベースに保存できます。また、品質異常が検出された場合には、自動的にアラートを発信し、迅速な対応が可能となります。Power BIの使用により、品質データを可視化し、傾向や問題点を把握することができます。これにより、品質管理の効率化や品質向上が期待できます。
在庫管理の効率化
Power Appsを使用して在庫データをリアルタイムで管理し、在庫の入出庫や在庫数の管理を自動化できます。また、Power Automateを使用して、在庫の不足や過剰を検知し、自動的に発注や調整を行うことも可能です。さらに、Power BIを使用して在庫の動向や傾向を可視化し、適切な在庫管理の判断材料とすることができます。これらは、在庫の適正化や在庫不足の回避に役立つでしょう。
メンテナンス管理の改善
Power AppsやPower Automateを使用して、メンテナンススケジュールや作業履歴を管理できます。センサーデータを収集し、Power BIを使用して機械の状態や故障リスクを可視化することも可能です。これらは、予防保全や効率的なメンテナンス計画の立案に役立つでしょう。また、異常な状態が検知された場合には自動的にアラートを発信させることにより、迅速な対応が可能となります。
顧客サービスの向上
Power Appsを使用して、顧客からの問い合わせや要望を効率的に管理できます。また、Power Automateを使用し、問い合わせへの迅速な対応や顧客への情報提供を自動化することも可能です。さらに、Power BIを使用することで、顧客の傾向や満足度を可視化し、顧客ニーズに合わせたサービスの提供が可能となり、顧客満足度の向上や顧客ロイヤルティの向上につながるでしょう。
建設業
データ管理と分析の効率化
施工データや品質管理データ、労務データなどをPower AppsやPower BIを使用して統合管理し、リアルタイムでデータ分析を行うことで、問題点の早期発見や改善点の把握が容易になります。また、Power Automateを活用してデータの自動収集や処理を行うことで、作業効率の向上も図ることができます。例えば、センサーデータや計測データの自動収集やデータベースへの自動保存を行うことで人為的なミスを減らし、データの正確性を高めることができます。
プロジェクト管理の効果的な支援
Power Appsを使用して、プロジェクトスケジュールやタスク管理、リソース管理などを一元管理することで、プロジェクトの進捗状況や課題の把握が容易になります。また、Power BIを活用してプロジェクトの可視化やレポート作成を行うことで、管理者や関係者間での情報共有がスムーズになり、意思決定の迅速化が図れます。さらに、Power Automateを使用してプロジェクトに関連するワークフローの自動化を行うことで、タスクの削減や効率化を実現することができます。例えば、承認フローの自動化やドキュメントの自動生成、連絡先の自動登録などを行うことで、作業の手間やヒューマンエラーを減らし、プロジェクトの管理を効果的に支援します。
現場作業の効率化と品質向上
Power Appsを使用して、作業指示や作業報告、品質チェックなどをスマートフォンやタブレットで行うことで、紙の書類作成や手作業の手間を削減し、作業の迅速化を図ることができます。また、Power Automateを活用して作業手順の自動化を行うことで、作業の標準化や品質管理を強化できます。例えば、作業手順書の自動作成や作業完了報告の自動送信などを行うことで、作業の漏れやミスの減少、品質向上につながるでしょう。
顧客とのコミュニケーション強化
Power Appsを使用して、顧客からの問い合わせや要望を受け付けるアプリケーションを作成し、顧客との円滑なコミュニケーションを実現することができます。さらに、Power Automateを活用して顧客とのコミュニケーションプロセスを自動化することで、返信メールの自動送信や顧客情報の自動更新などを行うことができます。これにより、迅速な対応や正確な情報提供を実現し、顧客満足度の向上につなげることができるでしょう。
小売業
在庫管理の効率化
Power Appsを使用してスマートフォンアプリを作成し、店舗内の商品のバーコードをスキャンすることで、リアルタイムで在庫情報を管理することができます。また、Power Automateを活用して、在庫が一定数以下になった場合に自動的に発注依頼を行うなど、在庫管理プロセスの自動化も可能です。これにより、在庫の過剰や不足を防ぎ、効率的な在庫管理が実現できます。
販売予測の精度向上
Power BIを活用することで、小売業における販売予測の精度を向上させることができます。Power BIは豊富なデータの可視化や分析機能を備えており、過去の販売データや顧客行動データなどを活用して将来の販売予測を行うことができます。さらに、Power Automateを使用して販売データの自動収集や更新を行い、リアルタイムで販売予測を行うことも可能です。これにより、正確な販売予測を行い、需要と供給のバランスを最適化することができます。
顧客データの活用
Power Appsを使用して顧客情報を一元管理し、顧客の購買履歴や嗜好などの情報を把握することができます。また、Power Automateを活用して、顧客からの問い合わせに自動的に返答するチャットボットを作成することもできます。これにより、顧客とのコミュニケーションを強化し、顧客満足度の向上に繋げることができます。
店舗運営の改善
Power Appsを使用して店舗内の作業手順やタスクの管理を行うアプリを作成することで、従業員の作業効率を向上させることができます。また、Power Automateを活用して、従業員のシフト管理やタスクの自動割り当てを行うことも可能です。さらに、Power BIを使用して店舗の売上や来客数などのデータをリアルタイムで可視化し、店舗の運営状況を把握することができます。これにより、店舗運営の効率化や改善策の検討が容易になるでしょう。
サービス業
顧客対応の改善
Power Virtual Agents*2を活用してチャットボットを導入することで、24時間365日対応の顧客サポートを提供することができます。また、Power AppsやPower Automateを活用して、顧客からの問い合わせや申し込みを自動で処理するシステムを構築することも可能です。これにより、顧客満足度の向上や効率的な業務運営につながるでしょう。
営業活動の効率化
Power AppsやPower Automateを活用して、営業担当者が顧客情報や商談の進捗状況を管理するシステムを構築することができます。これにより、営業チームの情報共有やタスクの進行管理がスムーズに行えるようになります。さらに、Power BIを活用して営業データを可視化することで、売上や顧客動向の把握が容易になるでしょう。
データ分析の活用
Power BIを活用して顧客データや売上データなどの分析を行うことができます。これにより、顧客の傾向や需要の把握、効果的な施策の立案などが可能となります。また、Power Automateを活用してデータの統合や変換を自動化することで、データの品質向上や分析の効率化が図れます。
まとめ
DX の重要性は企業に広く認知されつつあるものの、全社戦略が明確ではなく散発的な実施にとどまっている企業が8割程度あるのが現状です。
Power Platformは、現場のDX推進ツールとして近年多くの企業で採用されており、Power Platformの活用により、各業界で以下のような効果が期待できます。
製造業:品質管理の自動化、在庫管理の効率化、メンテナンス管理の改善、顧客サービスの向上
建設業:データ管理と分析の効率化、プロジェクト管理の効果的な支援、現場作業の効率化と品質向上、顧客とのコミュニケーション強化
小売業:在庫管理の効率化、販売予測の精度向上、顧客データの活用、店舗運営の改善
サービス業:顧客対応の改善、営業活動の効率化、データ分析の活用
Power Platformは、データの利活用を促進するDXのカギを握るツールと言っても過言ではないでしょう。
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*1 DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版) (ipa.go.jp)
*2 Power Virtual Agents 機能は、現在 Microsoft Copilot Studio の一部となっています。