IDC社の予測*1(2021年)では、2025年までに7億5000万個のアプリケーション構築が必要とされています。ソリューションの需要が飛躍的に増加している一方、それに対応できるプロの開発者が不足しているのが現状です。
そこで必要となるのが、ローコード開発です。2,000人以上のIT CIOとITプロフェッショナルを対象に行ったローコードプラットフォームに関する調査(エデルマンアセンブリー社がマイクロソフト社の委託により実施)によると、IT部門はコストを削減しながらローコードでソリューションを迅速に構築し、データのインサイトを活用できることが明らかになっています。ローコード開発には、主に3つの効用があります。
1.アプリケーション開発を加速
ローコードプラットフォームは、レガシーアプリケーションのモダナイゼーションを加速し、あらかじめ組み込まれたコンポーネントによって開発作業を迅速化することで、効率化を促進します。同調査では、CIOとITプロフェッショナルの89%でローコードが効率化に有効であると回答しています。
また、既存のレガシーコア機能の拡張、移行プロジェクトの合理化、レガシーアプリケーションのローコードソリューションへの置き換えにより、価値実現までの時間短縮に役立ちます。 同調査ではCIOとITプロフェッショナルの87%が、ローコードは組織のレガシーアプリケーションのモダナイゼーションに非常に役立つと答えているように、これらのソリューションはアプリケーションの最新化への取り組みを大幅に後押しします。
Microsoft Power PlatformとMicrosoft Azureに関する総経済効果調査(2021年にフォレスターコンサルティング社がマイクロソフト社の委託によりコーポレートITを対象に実施)によると、ローコードプラットフォームを使用したプロの開発者の効率は時間の経過とともに大幅に向上し、3年間で平均62%となっています。ITプロフェッショナルの45%が、人員不足を補うためにローコードプラットフォームを採用したと答えているように、こうした効率化は必要不可欠です。
さらに、ローコードプラットフォームにAIが組み込まれたことにより、さらなる効率化が期待できます。Microsoft Power AppsのCopilot、Power Automate、Power Virtual Agentsなどの機能は、自然言語オーサリングとAIアシスタントとの会話機能により、ソリューション開発をさらに効率化します。同調査では、CIOとITプロフェッショナルの87%が、ローコードプラットフォームに組み込まれたAIと自動化が増えれば、様々な機能をより効果的に利用できると答えています。
例えば、PwCでは、社内外のユーザー向けに構築された意思決定支援ウェブサイトの保守性、拡張性、汎用性を向上させるために、レガシーシステムからの移行を必要としていました。新しいソリューションの構築にあたり、Power PagesのウェブAPI管理レイヤーを使用することにより、Microsoft DataverseとC#プラグインで既存の作業を再利用し、ローコード開発により、6週間で作り上げました。それだけでなく、85%のコスト削減と30%の時間短縮を達成しました。
2.組織全体のコスト削減を推進
前述のフォレスターの総経済効果調査(2021年)によると、Microsoft Power PlatformとAzureの使用は、開発者の効率化、DevOpsの効率化、サードパーティソリューションへの支出削減と24%のコスト削減につながりました。
ローコードプラットフォームは、直接的なITコスト削減だけでなく、未着手となっているソリューションの構築により、手動プロセスの排除、ユーザーの生産性の向上、データに裏打ちされた意思決定の増加につながり、組織全体のコスト削減にも役立ちます。
同調査では、CIOやITプロフェッショナルの87%が、ローコードがコスト削減に有効であると回答しています。
IT部門とビジネス部門が導き出したコスト削減の好例として、EYのPowerPostアプリがあります。同社はMicrosoft Power Platformを利用して、EY Global Financeチームが社内で使用している、半手動の総勘定元帳(GL)計上プロセスを自動化しました。
総勘定元帳の転記プロセスは、SAPのERPシステムと統合されており、異なるアプリケーション間のデータ転送によりエラーが発生しやすく、SAPでの転記に数日かかることもありました。EYの社内開発チームがローコードにより数週間で構築したPowerPostアプリでは、新しいプロセスでメールやExcelの要件を100%排除し、文書処理のリードタイムの95%、既存コストの30%削減が見込まれています。
3.データインサイトからアクションまでを効率化
テクノロジーがあらゆるビジネスプロセスで普及するにつれて、データ量は加速度的に増加しています。データがデータベース間で複製され、適切にフォーマットされず、意思決定のために活用できないケースが少なくありません。 ローコードプラットフォームは、リポジトリを一元化し、データの視覚化を容易にし、より実用的なデータ提供を可能にします。データのサイロ化が解消され、組織がデータからより正確なインサイトを得ることができるのです。
正確なインサイトにより、IT担当者はユーザーに対してより包括的で効果的なソリューションを構築できるようになります。これにより、手戻りが減り、コストと市場投入までの時間が削減され、未着手のアプリケーションの減少につながります。同調査では、CIOの89%、ITプロフェッショナルの88%が、顧客や社内関係者へのサービス向上に役立つデータ駆動型のインサイトを得るためにローコードが有効であると回答していることからも、これらのソリューションがもたらす影響は明らかです。
ヨーロッパ全域で年間4億7700万人の乗客にサービスを提供しているÖBB(オーストリアの鉄道事業者)では、何百万もの顧客からの問い合わせに対して、迅速かつインテリジェントな自動応答と、必要に応じてオペレーターへ引き継ぐ方法が必要でした。
同社は、CRMシステム、Power BI、Power Automateと統合されたPower Virtual AgentsのAI機能を使用して、基本的な顧客の質問に答えるチャットボットを構築し、オペレーターはより複雑で価値の高いやりとりに集中できるようにしました。
さらに、データを基にMicrosoft Power BIで詳細な内部レポートを作成し、顧客とボットとのやり取りから独自のインサイトを得て、それらを基に顧客体験を向上させるためさらにボットを改良しています。
まとめ
以上のように、ローコードは、アプリケーション開発の加速、組織全体のコスト削減の推進、データインサイトからアクションまでの効率化に寄与します。これらの実現を目指すIT部門や組織にとって、ローコードは重要な開発戦略となるはずです。
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参照:*1 IDC, 750 Million New Logical Applications: More Background.
出典:https://cloudblogs.microsoft.com/powerplatform/2023/04/13/low-code-signals-2023/
解釈・翻訳:FBDS