ERP導入におけるFit to StandardとFit & Gap分析とは

 Oct 3, 2023 8:00:00 AM  富士フイルムデジタルソリューションズ株式会社

ERPの導入において、レガシーシステムに基づいてプロセスを再構築する、旧来の方法をとることが少なくありません。
しかし、このやり方では次のような問題を引き起こす可能性があります。

・設計、コーディング、テスト、トレーニング、文書化などに関連する、不要で過剰なカスタマイズとコストが増加する。
・イノベーションや改善の機会が失われることにより、ビジネスが停滞する。
・サイロ化された非効率的で不自然なプロセスの構築により、Dynamics 365のユーザビリティが損なわれる。
・エンドユーザーによるPower Platformを活用した迅速で低コストアプリケーション作成が阻害される。

新しいソリューションで何を実装するかを判断するには、現在のプロセスと改善すべき点を深く分析する必要があります。

新システムの標準に合わせる(Fit to Standard)

前述のような問題を避けるためには、Fit to Standard(標準に合わせるアプローチ)で始めることをお勧めします。まず、プロジェクトの初期段階でビジネスプロセス一覧を作成し、Dynamics 365で構成・実行するプロセスを検討します。要件とのフィット、ギャップを定義していく際は、Dynamics 365 でレガシーシステムを再現しようとするのではなく、まず標準システムで有効なプロセスを使用する観点が重要です。標準に適合させるアプローチを繰り返すことによって、「可能な限り標準を採用し、やむを得ない場合にのみカスタマイズする」考え方が浸透するでしょう。
Fit to Standardで始めることにより、以下のようなメリットがあります。

・既存のレガシーシステムに由来する詳細な要件から直接Fit & Gap分析に入るのではなく、コンフィギュレーションを通じて基本的なビジネスニーズを充足させることで、カスタマイズの削減を促進する。
・広範なビジネスプロセスに基づいて新システムとの適合性の評価を行うため、要件を取りこぼすリスクの軽減が期待できる。
・ビジネスユーザーは、自分たちの基本的なビジネス要件が新システムでどの程度満たされるかを、より明確に把握できるようになる。
・システムに組み込まれた最新の推奨標準プロセスを採用する可能性が高くなり、ソリューションの品質が上がる。レガシーシステムに基づく複雑なカスタマイズやバリアントは、お客様側で厳密な検討を行うことになる。
・可能な限り標準に従うことで、真に価値あるカスタマイズが容易になる。
・導入期間が短縮され、カスタマイズの開発を長期間待つ必要がなくなる。
・Microsoft Dynamics Supportを含む社内外のサポートチームによる標準プロセスのサポートが、容易になる。

Fit & Gap分析

このように、Dynamics 365の標準機能を採用することには明確なメリットがあります。しかし、特殊な機能が必要な場合もあります。それを特定するのが、Fit & Gap分析です。構成を決めた後プロセスのギャップを探し、カスタマイズするかどうかを判断します。

カスタマイズにかかる時間、コスト、複雑さは様々で、中にはビジネスプロセスにイノベーションをもたらし、ビジネス価値を高め、長期的な利益をもたらすものもあります。
カスタマイズを検討する際は、Dynamics 365 SaaS アプリケーションのイノベーションを考慮し、将来性のあるカスタマイズを行うことが重要です。Dynamicsの新機能のリリースプランに注意しておけば、すぐに不要になるようなカスタマイズの作成を避けられるでしょう。また、カスタマイズを検討する際は、直接変更されるプロセスだけでなく、関連するプロセスへの影響も考慮することが大切です。

標準システムでは満たすことができない要件に対しては、次のような方法を検討してみるとよいでしょう。
シンプルな設計の場合:Power Platformを使用した市民開発者主導のアプリケーションによって、低コストで迅速に大きな価値を生み出すことができます。
複雑でグローバルなソリューションの場合:Power Platformや他のテクノロジーを使って市民とプロの開発を組み合わせると、より効果的で生産的な方法となるかもしれません。

サードパーティソリューション

カスタマイズ以外に、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)から既存のソリューションを購入する方法もあります。社内で開発すると手間やコストがかかる場合や開発・維持するための十分なリソース、予算、専門知識がない場合によく選択されます。
ISVソリューションは、より専門的な領域にフォーカスする傾向があり、エンドツーエンドの業界固有のプロセスをカバーしていたり、ギャップをカバーするための特定の機能を提供していたりします。それらの機能によって、付加価値を得られる場合もあるでしょう。

Dynamics 365は、標準的なビジネスプロセスに対応するように設計されています。これにより、標準的なアプリケーションをより簡単に採用でき、ギャップの数を最小限に抑えることができます。また、外部アプリケーションのカスタマイズや統合にも柔軟に対応できます。標準とサードパーティーのソリューションを組み合わせるのも選択肢の一つです。

まとめ

システム導入においては、Fit to Standard(標準に合わせるアプローチ)で始めることをお勧めします。標準に合わせようとすることにより、カスタマイズの削減や標準機能・新機能の活用促進、導入期間の短縮などが期待できます。システム構成を決めた後、プロセスのギャップを探し、カスタマイズするかどうかを判断します。カスタマイズを検討する際は、将来性のあるカスタマイズを行うことや、関連するプロセスへの影響も考慮することが重要です。必要に応じて、Power Platformを用いたノーコード/ローコード開発やサードパーティーのソリューションも選択肢に入れるとよいでしょう。

富士フイルムデジタルソリューションズは、昨年、グループでの導入に先駆けて基幹システムをSAPからMicrosoft Dynamics 365に切り替えた際、Fit to Standardで約6か月での超短期導入を実現させました。豊富なMicrosoft Dynamics 365導入経験とノウハウを活かして、スピーディな導入をご支援いたします。
当社のERPソリューションについてはこちら、資料ダウンロードはこちらをご覧ください。

出典:https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/guidance/implementation-guide/process-focused-solution-fit-to-standard-fit-gap-analysis
解釈・翻訳:富士フイルムデジタルソリューションズ株式会社

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