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組立製造業におけるERPの効用

 

経済産業省の「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」(2023年5月)*1において、日本の製造業が直面する課題と今後検討すべき論点として、グローバルガバナンスの実現、業務標準化・デジタル化(基幹系/IT)、スマートマニュファクチャリングの実現/現場データの活用、効果的なサプライチェーマネジメントが挙げられており、製造業におけるDXの重要性が示されています。
今回は、製造業の中でも組立製造業の現状や課題、ERPの効用をご紹介します。

組立製造業とは

組立製造はディスクリート製造とも呼ばれ、様々な部品や素材を組み合わせて、一つの製品を作り出す製造方法を行う業種のことを指します。自動車、家電製品、家具など、多岐にわたる製品が含まれます。

組立製造業の主な課題

組立製造業は、主に以下のような課題に直面しています。

1. 生産スケジューリングの複雑さ
組立製造業における生産スケジューリングは、非常に複雑です。多数の部品と工程、人員の調整、機械の稼働時間など、さまざまな要素を同時に考慮する必要があります。また、生産計画は常に変動するため、スケジューリングは頻繁に見直しを要します。これらの調整を手動で行うことは、時間と労力を大きく消費し、ミスの可能性も高まります。

2. 在庫管理の難しさ
組立製造業では、多種多様な部品の在庫を管理する必要があります。適切な在庫レベルを維持することは、生産効率とコスト削減に直結します。しかし、需要の変動や納期の遅れなど、予測不能な要素により在庫管理は難易度が高い課題となっています。

3. 品質管理の難しさ
組立製造業においては、部品の品質や組立工程の精度が製品の品質に直結し、これが企業の評価や信頼性に影響します。しかし、生産ラインが複雑であればあるほど、品質管理の難易度は上がります。特に、欠陥部品の早期発見や原因追求、再発防止策の立案など、品質管理の全工程を適切に行うことは大きな課題です。

4. 需要予測の難しさ
組立製造業において、生産計画や在庫管理、購買計画などは需要予測に大きく依存します。しかし、市場の動向や消費者の嗜好は常に変動するため、正確な需要予測を行うことは困難です。需要予測の誤りは生産遅延や在庫過多・不足といった問題を引き起こし、企業の収益に大きな影響を及ぼします。

5. 適切なデジタル化の難しさ
近年、製造業全般においてデジタル化が進行しています。AIやIoT、ビッグデータなどの最新技術を活用することで、生産効率の向上やコスト削減、品質向上などのメリットが期待できます。しかし、これらの技術を適切に導入し活用するには、専門的な知識や経験、十分な投資が必要です。また、既存のシステムや業務フローの改革、従業員のスキルアップといった課題も伴います。これらの適切なデジタル化は組立製造業にとって大きな課題となっています。

ERPの効用

DXにおいてはデータの利活用が不可欠ですが、システムがレガシー化、サイロ化しており、データを一元管理し、利活用することが難しいことが少なくありません。
情報の一元化と企業全体の業務合理化に欠かせないのがERPです。ERPの活用により、組立製造業における課題解決が期待できます。それぞれの課題に対して、ERPの活用によってどのように対処できるか見ていきましょう。


1. 生産スケジューリングの複雑さ
ERPは生産スケジューリングの自動化を可能にします。ERPによって、全ての関連データを一元管理し、生産計画、部品の在庫情報、人員のスケジュール、機械の稼働状況などをリアルタイムで把握できるようになります。これにより、生産スケジュールの自動生成と最適化が可能となり、手動での調整を大幅に軽減します。また、生産計画の変更にも迅速に対応し、生産ラインの効率を最大化します。

2. 在庫管理の難しさ
ERPによって、在庫管理の自動化と最適化を実現できます。在庫の入出庫をリアルタイムで追跡し、適切な在庫レベルを維持できるようになります。また、需要予測や生産計画に基づき、自動的に購買計画を生成することも可能です。これにより、適切な在庫レベルの維持と在庫コストの最小化を実現します。

3. 品質管理の難しさ
ERPは品質管理の強化に役立ちます。ERPは製造プロセス全体を自動化し、データを一元化するため、品質管理に関連する情報がリアルタイムで利用可能になり、問題が発生した場合に迅速に対応できます。また、製品の製造プロセス全体を追跡できるため、欠陥が見つかった場合でもその原因を特定しやすくなります。さらに、品質分析ツールやレポート機能を使用することで、製品の品質トレンドがわかり、品質問題の早期発見と改善が可能となります。

4. 需要予測の難しさ
ERPは需要予測の精度を向上させます。過去の売上データや市場の動向、季節性など多様なデータを分析し、精緻な需要予測生成ができます。これにより、生産計画や在庫管理、購買計画の最適化が可能となり、生産遅延や在庫過多・不足といった問題を防ぎます。

5. 適切なデジタル化の難しさ
ERPは業務プロセスをデジタル化し、業務効率化と生産性向上を促進し、AIやIoT、ビッグデータといった最新技術との連携を可能にします。そのため、最新技術の導入と活用が容易となり、企業の競争力強化にもつながることが期待できます。また、既存のシステムや業務フローの改革により、組織変革や従業員のスキルアップにもつながるでしょう。ただし、導入においては、十分な投資が必要である点や専門的な知識や経験のある適切なベンダーの選定が重要である点に注意が必要です。

まとめ

日本の組立製造業は、生産スケジューリングの複雑さ、在庫管理の難しさ、品質管理の難しさ、需要予測の難しさ、適切なデジタル化の難しさなど様々な課題に直面しています。これらの課題解決に有効なのがERPです。ERPの活用により、作業プロセスの自動化や可視化、生産計画の最適化や柔軟な調整、在庫管理の効率化、品質管理の改善、リードタイムの短縮など、様々な効果が期待できます。
ただし、ERPの導入には注意点もあります。導入コストや導入期間、社内の教育やトレーニングなどの課題が発生する可能性があります。そのため、ERPシステムの導入を検討する際には、これらの要素を十分に考慮し、導入計画を立てることが重要です。

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*1 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/014_04_00.pdf